2008.06.16

PHASE3-うごめく影 part1

 オーブでの爆破テロについては、プラントにも耳に入っていた。
 あの平和な、殺人はあったとしても、内乱さえ全くないオーブでのテロ。
 コーディネイターとナチュラルも、以前と比べたらずいぶん仲良くなったほうだった。
 それなのに、なぜテロなど起こるのだろうか。
 『宗教』というのも考えられたが、オーブはハウメア教、もしくは何も信仰していなかった。
 
「母さん、オーブでテロだってさ。なんでテロなんて起こったのかな? あんなに平和な国なのにね、オーブは。マリュー姉さんとかムウ兄さんとかもいるのにね」
 
 セリムは、複雑な心境で母――タリアが微笑む写真を見つめた。

 先の大戦が終ってから、セリムの家に急に客が現れた。
 その人達はセリムの事を知っているようだったが、セリムは全く知らなかった。
 それもそのはず。
 その二人は、直接ではないにしろ、間接的に母親を殺した人物だったのだから。
 初めて母が死んだ時は、何日も何日も泣きくれた。
 しかし不思議なことに、この二人――マリューとムウ――に会ってから、涙が出ることはなかった。
 普通は仇討ちとかなんとかで、二人を恨んでもよかったのに。
 マリューは言った。

 ――貴方の母、グラディス艦長からの遺言。それはね――私達が直接聞いたわけじゃないんだけど――息子……貴方に会ってあげて……。その一言だったそうよ。

 はっきり言って、父はセリムの事も母の事も、どうとも思っていない。
 もちろん母も、そしてセリムもそれに気付き、無視していた。
 母が死んでから、セリムの予想通り父は遊んで、遊んで、遊んで…その毎日を繰り返している。
 だからこそ、この母の遺言を聞いたとき、母に感謝した。
 ――ああ、そうか。母さんは僕のこと大切にしてくれてるんだ。この人たちに託してくれるんだ。一人ぼっちにしたりはしないんだ。
 と。

「マリュー姉さんも、ムウ兄さんも、元気かなぁ」

 母の写真をじっと見つめながら、ポツリとセリムは呟いた。
 その瞳は悲しげに笑っている。
 ――母は、今こうして軍服を着ている自分をどう思っているだろうか。
 母はいつもこう言っていた。

 ――戦ってはダメよ。もし貴方が危険な目にあったら、母さんや皆が守るから、ね?

 なのにセリムは戦っている。軍服を着ている。
 それは何より、母が誇らしかったから。真似をしたかったから。
 母のように、強くありたかったから。

「僕、母さんや、マリュー姉さんやムウ兄さんみたいになりたいんだ。強くなりたいんだ」

 セリムは、そう誇らしげに言うと、ニッコリ微笑んだ。
 その笑みは15歳にして決断力のあるものだった。
2008.06.01

腐向け短編【目次】

私が主に進めるCP。
1.キラアス(っていうかキラアスキラ) 2.アスカガ(っていうかアスカガアス)
3.シンアス(っていうかシンアスシン) 4.イザアス(っていうかイザアスイザ)
5.キラフレ(っていうかキラフレキラ) 6.ギルアス
7.レイアス              8.ラウアス

ほとんどアスランが受けなのは気にしないで下さい。
だって、アスランってヘタレだし天然タラシだし。テクとか無さそうだもの((笑
でも、やられっぱなしっていうのもあの運動神経からして考えられない……。
ってなわけでキラアスキラとかあいまいなものばかり((笑
変な趣味かもしれませんが、ドウゾ多めに見てやってくださいな。

【目次】
キラアスキラ短編 『プレゼント


2008.06.01

プレゼント

 アスランはじりじりと後ずさりしていた。
 額にはびっしり冷や汗をかいていて、見上げる視線の先にはニッコリ微笑むキラの姿。
 
「いや、その、まだ、というか……」
「というか?」

 ニッコリ微笑みつつも、すごんでくるキラ。
 ――やっぱり、怒ってるか…そりゃ怒るよな……
 
「悪い、実はオーブでも仕事が色々忙しくて、そっちまで気が回らなかったんだ。キラに会えるかどうかも分からなかったし……」
「へえ〜。で、ちゃっかりカガリには誕生日プレゼントあげたんだ♡」

 キラがしゃべるごとに、汗の粒が多くなる。
 アスランは、手のひらを見せてキラを制した。

「ちゃっかりていうか、まあその、言い訳みたいなことはしたくないんだが……カガリとは毎日顔合わせるから、忘れるにも忘れられないだろう? でもキラは……」
「毎日顔合わせないから忘れちゃう?」
「う、いや――」

 ちょっと言い方をしくじったと、言った後に気付くアスラン。
 なぜか、こういう類いの事についてはどこか抜けているのだ、彼は。

「ひどいよ、アスラン。僕はいつも君の事考えたのに……忘れちゃったの? 僕を?」
「違う、違うんだ、キラ。俺だっていつも考えたさ。何してるのかとか、何処にいるのかとか」
「本当? アスラン?」
「ああ、本当だよ」

 キラは、さっきまでの鋭い笑みを引っ込めて、心から微笑んでくれた。
 アスランは、ゆっくり息を吐いて、肩の力をぬく。

「じゃあさ、今から僕にプレゼントちょうだい」
「へ?」

 アスランは、せっかく吐いた息を、また大量に知ってしまった。
 ――今から? ふざけるな。無理に決まってるだろ。今何時だと思ってるんだ。

「キラ、それはちょっと無理だろ。明日じゃダメか?」
「ダメ」
「でも、店はどこも閉店してるだろうし――」
「別にお店に行かなくても賞品ならここにあるじゃない」
「……?」

 キラがまたニッコリと微笑みだす。
 心からの笑みではない。
 いやらしいどこか皮肉れた笑みだ。

「おい、ちょっとまて、キラ。俺、実は急用が――」
「ダーメ。ダメダメ。急用は後回しね。僕につきあって。忘れた罰だよ」

 クルリと向きを変えて部屋から出ようとしたアスランをキラが強引に引っ張って床に押し倒す。
 不意を疲れたアスランは、とっさに顔を青くするとキラに怒鳴りつけた。

「なっ、ちょ、なんか話ずれてるだろ、ていうか最初からこれが目的だったんだろ、キラッ!!」

 そんなアスランを見て、さらににんまり笑うキラ。
 その顔は、幼い頃マイクロユニットの課題を押し付けてきた時のようだった。
 キラがその顔をすると、絶対に何か面倒なことが起こる。

「だって、今日僕の誕生日じゃん。僕の言う事なんでも聞いて!」
「ふざけるな! なんで俺が下なんだ」
「僕、下嫌だもん」

 ――そりゃ男だったらそういうもんだろ。

「いや、だから、……なら俺がお前を、その、してやるから、俺が下っていうのは――」
「いやだよ。 今日は僕の誕生日なんだから。アスランはプレゼント。じゃあさ、君の誕生日の時に僕が何でも言う事聞いてあげる」

 ――いや、俺そういう事を言いたいわけじゃなくて……。

「だから、ね?」
「なっ………」

 ――でもなんで、俺はキラのいう事を断ることが出来ないんだろうか。

「今日だけ、だからな……」
「ありがと、アスラン」

 にっこりと嬉しそうに微笑むキラ。アスランもそれにつられてわずかに笑みをつくる。
 しかしアスランはその時は気付いていなかった。
 キラがこれから自分に何をしでかそうとしているのかということに……。

【後書き】
 すみません、変な終り方で。なんかありきたりww
 最後まで書こうかと思ったんですが、パスしておきました。
 そこまで書くの上手くないので……。
 これからアスランがどんな目に合うのかは、ご想像にお任せします。
2008.05.30

PHASE2-奪われた翼 part5

 カガリ達は、内閣府官邸に戻ったかと思うと、すぐさまAAと向かった。
 停戦後、AAに一度入った事があるルナだが、どこからかあの戦争の苦しさが染み渡るのを感じた。
 それと共に、絆や希望といったものが自然と心の中に入り、さっきの悲惨な光景が一瞬頭から抜けた。

「ラミアス艦長、オーブのデータが流出しているというのは本当か!」

 カガリが、勢いよくラミアス艦長に迫る。
 その声で、はっと我に返るルナマリア。
 ラミアス艦長は、けわし気に眉間にシワを寄せると、コクリと頷いた。

「ええ。それも、どこへ流れているか分からないの。必死に探してるんだけど……」
「流出は止めたか?」
「ええ、もう大丈夫」
「どうしてこんなミスを…あんなことが、あった、ばかりなのに……」

 カガリは、ぐっと拳を作ると、歯を食いしばった。
 すると、そのすぐ脇からキラが現れる。
 そしてラミアス艦長と目を合わせると、流出先を突き止める手伝いをしだす。
 ――確か、こういう事についてはヤマト隊長のほうがアスランよりも得意なんだっけ。
 ルナは、軽々しくそんなことを考えた。

「ちっ、裏の回線から…それも、見落としがちな小さな回線だ。それに、居場所がばれないよう途中で……」

 よくわからないが、キラがぶつぶつと何かを呟いていた。
 そして、指が見えないような速さでキーを打つ。 
 その間、アスランとカガリ、ラミアス艦長は、爆発の件について話していた。

「テロ? そうとうひどいの?」
「はい。バスに乗ってた人は、誰も――」

 そこで苦しげに首を振るアスラン。
 誰も生きていなかった、ということだ。
 カガリは、悲しげな目でアスランを見上げる。

「テロ……それにデータ流出か。ちっ、面倒くさいっ」

 イザークは、舌打ちをしてえらそうに腕を組む。
 しかし、その奥深くでは不安や悲しみが渦巻いているだろう。
 あまり表に感情を出さないのが、また彼のいいところなのだ。
 すると、急にキラが顔を上げた。

「マリューさん、流出先が分かりました。えっと――え? この位置は……」

 何に驚いたのか、目を見開いたまま固まるキラ。
 ラクスは、そんなキラに駆け寄ると、画面を覗き込む。
 そしてキラと顔を合わせると、彼女に珍しく眉間にシワを寄せた。

「カーペンタリア、ですか?」
「うん。多分……」

 すると、イザークが驚いて声を上げた。
 組んでいた腕をはずし、キラの肩をぐっと掴む。

「おい、カーペンタリアだと? ならお前はザフトがオーブのデータを奪ったというのか?」
「イザーク、カーペンタリアだからってザフトが奪ったとは断言できないよ」
「なら、誰が大量のデータをもっていったというんだ?」
「う〜ん、それは……」

 言葉に詰まってラクスの顔を見やる。
 そして首を振った。

「とにかく、今はまだ何もいえないよ。……カーペンタリアならココからそう遠くない」

 キラはカガリの顔を見つめた。
 そして軽く首をかしげてみせる。
 カガリは、キラの言いたい事を理解したのか、勢いよく頷いた。

「行こう。ラクスや隊長が二人もいるのだから、オーブの者でも通してくれるだろう」

 それにあわせて、ルナマリアもぐっと頷いた。
 そしてシンの顔を見る。
 シンも、ルナに微笑みかけると頷いた。
 皆同じ意見、という事だ。
 するとラミアス艦長は穏やかな笑みを見せると言った。

「分かったわ。テロの事は私達のほうで探ってみます。ただのテロだと、いいんだけど……」
「この流出とテロが重なったのが偶然だったらいいんだけどねぇ」

 少し不安そうに言うラミアス艦長の横からフラガ一佐が軽々しくそう言った。
 しかし、言っている内容がそれいじょうに重い。
 そう、そうなのだ。問題はそこだ。
 ――データを盗む為にテロを起こしたのではないか。
 みんな、そのことを深く疑っていた。
2008.05.26

PHASE2-奪われた翼 part4

 一方、ここはアークエンジェル。
 マリューは、ちょうど政府から帰ってきていた。
 朝からずっと会議だったらしく、眠くてたまらない。
 すこしコックピットによってから、自室で睡眠を取らなければ。
 優雅にそんなことを考えながら、マリューはコックピットへ入った。
 すると、いきなりノイマンの叫び声が聞こえる。

「どうしたの、何かあったの?」

 とっさに顔を青くするノイマンに駆け寄りたずねる。
 ノイマンは、マリューが帰ってきたことに気付くと、画面を見せながら手短く言った。

「ジャスティスやアークエンジェル、いや、それだけじゃない……オーブ軍のデータが多数流出しているんです」
「なんですって?」

 マリューもそれを聞いて、ノイマンと同じく顔を青くした。
 ――軍のデータが流出だなんて、そんなことが……
 
「一体どこに流出してるのか突き止められる?」
「ええ、やってるんですが……」

 突き止められない、か。
 ということは、相手は相当“腕前がある”らしい。
 
「おいマリュー、なんか外がやばいことになって、って、どうした?」

 何かをマリューに愚痴りに来たのか、ムウがコックピットに入ってきた。
 マリューは無言でムウを手招くと、画面を見せる。

「――これは……データが流出? 一体何処の馬鹿だ?」

 マリューは首を振った。
 
「分からないわ。でも、早く政府に…カガリさんに伝えないと。今カガリさんは何処にいるか分かる?」
「そう、俺今それを言いに来たんだ。お姫様は坊主達と一緒にオロファトへ行ったんだが、そこでバスが大爆発したみたいで大騒ぎなんだ。なんでもテロだって……」
「テロですって? それでカガリさんたちは無事なの?」
「ああ、なんとかな」

 マリューは額に手を当てると深くため息をついた。
 どうやら、自室で優雅にお昼寝は無理なようだった。


 ――――


「カガリ…ラクス? 来たのか――」
「おい貴様、これは、これは一体どういう騒ぎだ! なぜ、車がそこら中に転がっているんだ!」

 イザークは、アスランに掴みかかると共に怒鳴った。
 イザークが動揺しているのが十分に分かった。
 アスランは、そんな態度のイザークを見ても、口を開けずにいる。
 
「ああ、だから……“こういうこと”だ」
「なんだと貴様あぁ!」
「アスラン――」

 ありありと怒りをあらわにしながら叫ぶイザークと対処に、カガリは呆然とコチラを見つめた。
 そんな表情のカガリを見てずきりと胸が痛む。
 ――似ている、あの時と
 父親が亡くなった時のように、苦しみを押し殺している。
 アスランは、無理にカガリに笑いかけた。
 すると、ラクスがキラに向かって言った。

「キラ、私達は一旦戻ったほうがいいでしょう。政府のほうに戻れば何か分かるかもしれません」
「うん、そうだね」

 キラはゆっくり頷くと、カガリの肩を軽く叩いた。

「戻ろう。シンも、ルナも、イザーク達もそれでいいよね?」
「はは、どうせ嫌だとは言わせてもらえないんだろ?」

 ディアッカは苦笑気味にそういいつつも、コクリと頷く。
 他の皆も、あのイザークでさえ、もちろんといった表情で頷いた。