2008.05.09

PHASE1-芽生える焔 part5

「ちっ、なぜ女というのはこうも風呂から出るのが遅いんだ!!」

 イザークは机を叩きつけて、椅子を後ろへ吹っ飛ばして立ち上がった。
 整えられた髪にはタオルがまかれており、服は丸に“湯”と書かれた浴衣を着ていた。
 ディアッカは、あんな調子で立ったり座ったりするイザークに呆れてため息をつく。

「体の隅から隅まで丁寧に洗ってるんだろうよ。そんなに気になるなら覗いてこればいいじゃん」

 そしてクスリと笑う。
 イザークは、ディアッカが冗談半分で言っていることを分かっていつつも、ついつい顔を赤くした。

「なっ、何を言う貴様!」
「あれっ、顔が赤よイザーク。何を想像してるんだかな〜」
「うるさい!」

 ちらりとこちらを向いたディアッカに、イザークは赤面しながら怒鳴った。
 右手には拳がつくられ、今にも振り上げられそうだ。
 ディアッカは、両手でイザークを制して、何度も悪かったと言い苦笑いした。

「おい、イザーク、ディアッカ。ここには俺達と違って一般庶民の人達も居るんだから、あんまり騒ぐなよ。こっちまで迷惑がかかる」
 
 すると、右側の席に座っているアスランは、優雅にお茶を飲みながらそう言った。
 イザークとディアッカを見据えるその目はいかにも『呆れた』『昔と変わらず……』と物語っている。

「気にしなくていいよ、アスラン。イザークはプラントでもずっとこんな感じだから」
「えっ、やっぱりそうなのか」
「ええ、もうずっとこんな調子です。ジュール隊長の下で働いているシホがかわいそうですよ」
 
 シンとキラとアスランとで勝手に話し出してしまう三人にイザークはカッとなった。

「なんだと貴様ら〜! だいたい、なんでいきなりオーブへ来て温泉なんだ。普通は行政府に挨拶に行くとか、元首相の墓に行くとかそういうところから始めるだろ!」
「この件については、政府には何もいっていないからな。挨拶なんて逆に相手に迷惑がかかるだけだろ。それにウズミさんの石碑もこの後に寄るんだから…なんでお前はそんなにカッカしてるんだ?」

 ――誰のせいだ馬鹿者!
 すっとんきょんな顔をしているアスランに、そう怒鳴ってやりたいのを必死に堪えるイザーク。
 その横で、ディアッカとキラ、シンはたまらず噴出したのだった。

 ――――10分後

「ごめんなさい。遅くなってしまって…」

 ラクスが女湯からやっと出てきた。
 肩にタオルをかけて、髪を後ろで結んで背中に髪がかからないようにしている。
 その後ろからは、カガリとメイリンが順に出てきた。
 三人とも丁寧に浴衣を着ている。

「ああ〜すっきりした。でもすごいのねオーブって。こんなに大きなお風呂があるなんて私知らなかった。カガリさんはいつもこんなお風呂に入ってるの?」
「まさか。普段はプラントと同じようなお風呂さ」

 するとシンがため息まじりに言った。

「プラントには温泉なんてないからね。もしかして、風呂長引いたのってルナのせい?」
「だって、すごく気分良くてさあ〜」

 ルナは人差し指をわざとらしく立てるとにこやかに言った。
 イザークはそんなルナの態度に苛立っているらしく眉間にシワがよっている。
 その横ではディアッカがイザークの肩を軽く叩いていた。
 
「まあまあ、落ち着けってイザーク。いいじゃん? 別に急いでるわけじゃないんだし」
「俺は常に落ち着いる!」

 ――どこがだよあの人。
 シンは醒めたような目つきでイザークを見つめた。
 やっぱり元ザフトレッドって変わり者ばかりだ。
 アスランみたいに真面目すぎな奴もいるし、ディアッカみたいに保母さんみたいのもいるし、イザークみたいに落ち着き無いやつもいるし。
 そう思うと今のザフトレッドって、ずいぶん落ち着いてる気がする。

 するとカガリは、ぐっと伸びをして言った。

「それじゃ、そろそろ行くか。もうお昼時だし――」

 カガリがそう言おうとした瞬間に、すさまじい音が響いた。
 激しい揺れが起こる。
 地面が揺れているわけでなく、大気全体が揺れている感じだった。 
 シンははっと顔を上げると、何かが襲ってくるわけでもないのにとっさに身構えた。
 額に冷や汗が流れる。 
 ――今のこの感じ……まるで何かが爆発したような音だ。

「キラ、今の音、爆発音……だよな?」

 アスランもシンと同じことを感じたのか、キラに問いかける。
 するとキラは顔を見合わせるとゆっくり頷いた。

「おいおい、やめてくれよ……」

 ディアッカはまだ濡れている頭をかいて、ぼそっと呟く。
 
「ラクス達はここで待ってて。アスラン!」
「ああ、分かってる」

 キラはそういうと、アスランと一緒に銭湯の外にかけて行った。
 これがまた、新たな始まりになるとも知らずに――
2008.04.26

PHASE1-芽生える焔 part4

 それから、直ぐに一週間が過ぎ――

「キラ!」
「アスラン!」

 アスランは、まず初めに出てきたキラに歩みよった。
 それに気付いたキラもぱっと顔をあげてこちらに歩いてくる。
 その後ろからはおなじみのラクス、シン、そしてイザークやディアッカ、ルナマリアまでもがぞろぞろと出てきた。
 イザークやディアッカが来ることは聞いていたが、ルナマリアまで来るとは驚きだった。
 まあ、あの後シンと色々あったらしいから、予想していなかったわけではないが……。
 そういう類の事はどうも苦手である。

「ラクス、よく来たな」
「カガリさんも、元気そうですわね」

 カガリとラクスは軽く抱き会うとお互いに微笑む。
 今日のラクスはいつもと同じように軽めのドレスを体にまとっていた。
 ピンク色のドレスがなびいて、前以上に大人びた雰囲気が漂っている。
 
 アスランは、それと対象にカガリの格好を見る。
 白いブラウスに紫色のスーツ姿。
 ――ラクスと違ってカガリは全然変わってないんだなぁ。
 前より髪が伸び女性らしくなったはずだが、2人を見比べてみるとやはりカガリのほうが子供っぽい。
 アスランはなぜだかクスリと笑った。

「相変わらず変わってないんですね、アスハ代表は」
 
 シンがキラの後ろからひょっこり顔を出し、アスランに嫌味っぽく呟く。
 ――お前もな。
 そう言いたくなったのを、アスランは必死に押し殺した。

「こらシン、アスハ代表にそんなこと言ったらだめじゃない! 一応代表なんだし」

 フォローするつもりが全然フォローになっていないルナマリア。
 変わったのは外見だけで、中身は皆あまり変わっていない様だった。
 そこでアスランは初めてある事に気付いた。

「あれ、メイリンは連れてこなかったのか?」

 アスランの質問にシンとルナマリアは顔を見合わせる。
 どうやら知らないらしい。
 するとキラが変わりに答えた。

「メイリンはグールド議長に呼ばれたから」
「グールド議員に? なぜ?」
「さあ? 僕もそこまで知らないんだ。ただ呼び出されて――」
「メイリン・ホークは情報のエキスパートなのだろ? どうせ何かの情報がほしいだけだ」

 四人で話している中、横から誰かが割り込んできた。
 銀髪の髪に白い軍服。相変わらず髪はしっかりと整えられている。
 イザーク・ジュールだ。

「あ、イザーク……」
「あ、じゃないだろ、あじゃ! 俺はずっとココに居たんだからな! 大体なんでこんなところで貴様らの立ち話に付き合わなければならんのだ。俺は早く部屋に入りたいんだ!」

 さっきまでの落ち着いた声は何処へ行ったのかアスランに掴みかかって大声で怒鳴りつけた。
 その後ろでは呆れたような顔でアスランに微笑むディアッカの姿がある。
 アスランは、イザークの勢いに飲まれつつディアッカに微笑み返した。

 カガリはラクスと相変わらず話していたが、俺達の騒ぎに気付くと慌てたように言った。

「わっ悪かった、中に入ってくれ」
 
 180度向きを変えて内閣府官邸へ招き入れた。
 シンやルナマリアが遠慮するように入る中、イザークは堂々と入っていく。
 アスランとキラは、そんな姿を見て、顔を見合わせて笑った。


 ――――


「そうか……議会はあんまり上手く言ってないのか……」

 カガリは深くため息をついた。
 なんとなく予想はしていたものの、ラクスから直接伝えられると現実味があった。
 
「ええ、皆さん開発する方向へ向かっていらっしゃいます。勿論ジュール議員やエルスマン議員のように反対してくれる方もいるのですが、ライトナー議長がなかなか納得してくれないのです」
「ライトナー議長が……」
 
 ふとカガリの頭の中で、停戦後に握手を交わした優しげな笑みがよみがえる。
 彼女は中立派のはずなのに、なぜそうもコロニー開発にこだわるのだろうか?
 彼女も、コロニー開発が戦争の火種になってしまうかもしれないという事を理解しているはずなのに。
 すると横からアスランが口を挟んだ。

「ライトナー議長は血のバレンタイン後に一度急進派へと転換したことがある」
「そう、なのか?」

 アスランの話に耳を傾けつつ、ラクスの顔を見やる。

「ええ、確か父がそのような事を言っていました。きっと、議長も怖いのでしょう。無力のせいで大切なものを失ってしまうのが」

 カガリはぐっと顔を俯けた。
 怖い――議長の気持ちも良く分かる。でも、国の代表がそんなのでいいのか?
 力を持ちすぎたら、いずれその力が溢れ出る。
 だいたいザフト基地専用コロニーなんて作ってどうするんだ?
 そこに力を集めたところでその恐怖が消えるのか?

「まあまあ、そんな硬いこと言ってないでさ〜のんびりしようぜ。休暇だぜ?」
「ディアッカ! これは休暇ではない、あくまでラクス・クラインの護衛だ!」
「あ〜そうそう、護衛ね、ご・え・い」

 ディアッカは馬鹿正直に答えるイザークに苦笑いした。
2008.04.26

PHASE1-芽生える焔 part3

「おかえりラクス。議会はどうだった?」

 キラは、議会から帰ってきたラクスに声をかけた。
 ラクスはキラに気付くと、俯きかげんだった顔を上げてにっこり微笑んだ。
 しかし、その顔はどこか不安げだ。

「あんまり……上手くいきませんわね」
「え、じゃあ……?」
「いえ、決定したわけではありません。でも皆さん建てるの方向に向かっていらっしゃって……」

 キラは、ラクスの悲しげな表情を見つめると、深くため息をついた。
 どうも、世の中は上手くいかないなぁ。
 まあ、それは当たり前の事なんだけど。
 当たり前の事だからこそ、こういう状況になって、それが今まで以上に腹立たしくなる。

「それでも、コロニーの建築は阻止したほうがいい。そんな風に基地なんてつくったら、未だに地球ではブルーコスモスが居るんだし……」
「自ら火種をまくようなことはしたくありませんものね」

 ブルーコスモス。コーディネイターを忌み嫌う集団だ。
 メサイア攻防戦時に、ブルーコスモスの親玉【ロゴス】は倒されたものの、やはり「間違っている」「恐ろしい」「彼らは敵だ」と思っている人々も未だに居るのだ。
 自分とは違う者を軽蔑してしまうのは、人間として仕方がないことである。
 そんな彼らの空の上に、でっかいザフト基地などつくってしまえば「コーディネイターが殺しに来る!」と怯え、また戦いになりかねない。

 ――争いがなくならぬから、力が必要なのだ
 元プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルはそう言っていた。
 しかし、キラはそうは思わなかった。
 力があるから争いをしてしまうんだ、人間は。力さえなければ人は争わない。――否、争えない。
 力があると、人の欲望心が何かを求めて手を伸ばしだす。「あそこなら手に入れられる」と。

 キラは、ぐっと拳をつくり思う。
 自分には政治の事についたら全然分からない。何も出来ない。
 いくら力があっても、今この場じゃ無力なだけだ。
 結局自分が持っているのは、争いをつくる力だけ。
 その力を今自分はどう使えばいいのか。
 キラは、改めて深く考えたのだった。


 ――――


「ええ!? シンもオーブにラクス様の護衛つくの?」
「そっ、俺とキラと、あとジュール隊の元ザフトレッドも行くらしいよ」

 興味津々で聞いてくるルナマリアに、シンはそっけないフリをして言った。
 内心興奮しているのだが。
 
「ジュっジュール隊長も行くの!?」
「らしいね」

 ジュール隊長ことイザーク・ジュールは、アスランの戦友らしい。
 護衛というより、まるで旅行気分だな。
 まあ、ラクス・クラインを襲うような集団がオーブに居るわけないからな。
 この時点になって、シンは改めて思った。

「いいなぁ、私も行きたいな、オーブ」

 ルナマリアは羨むようにコチラを見ながらそう言った。
 ようするに、「私も行きたいなぁ。連れて行って♪」という事だろう。
 シンは、醒めた目でルナマリアを見つめた。

「ルナ、旅行じゃないんだからな、一応」

 しかしルナは、そんなシンにすがるような甘ったるい声を出す。

「ねーぇ、シン。私も行きたいのよ、オーブに。ね?」

 シンはルナマリアをじっと見て、呆れたようにため息をついた。

「分かったよ、キラに頼んでみる。一応ルナもアスランの元部下なんだし」
「本当? ありがとうシン」

 ルナは、シンのOKの返事をもらうと、スキップしながら自室へと戻っていった。
 ――ルナなら、別にオーブに行ってもいいよね。
 それからシンは、キラにどんな風に言ってルナもオーブに行く許可を貰うか必死に考えたのだった。
2008.04.26

PHASE1-芽生える焔 part2

「オーブに? でありますか……」

 シンは驚いて立ち上がるが、目の前にいるのが上司であることに気付き語尾を敬語に直す。
 そして赤い目でにっこり微笑む紫色の瞳を見つめた。

「うん。ラクスがオーブの首長の――カガリと会うから、護衛ついでに一緒に来ないかって」

 護衛ついでって……。そんなんでいいのか?
 シンはそういいたいのも山々だったが、それ以前にオーブに戻れるという事実に胸が躍った。
 メサイア攻防戦から、彼の中では何かが変化していた。
 シンは、家族が死んでからオーブを信用することが出来なかった。
 しかし、メサイア攻防線後、彼は自分がオーブを好きだったのだと気付いた。
 好きだったからこそ、家族を守ってくれなかったオーブに憤りを感じたのだ。
 オーブには、裏切られたくなかったから。
 
 メサイア攻防戦から2年もたち、現在C.E.76。
 シンも19歳になり、身長も170cmを超え、顔もどこか幼げな表情は消えていた。

 すると、目の前で未だに微笑み続けるキラが口を開く。

「で、来るよね? ここんところずっと仕事続きで大変だったでしょ? 護衛っていっても休暇みたいなものだろうし……。ほら、オーブにはカガリも居るけどアスランも居るから」
「ええ、別にいいですよ」

 どうでもいいような口調でそう吐き捨てる。
 しかし、実際心の中では必死に興奮を押さえつけていた。
 そんなシンを見て、キラはクスリと笑う。
 そして立ち上がると手を振り、茶色い髪を揺らしながらその場を去った。

「なんだよ…キラの奴……」

 なぜか顔を真赤にしながら、シンはボソリと言った。


 ――――


 場所は変わりオーブの内閣府官邸。
 アスランとカガリは、そこで話をしていた。

「で、いつキラ達はこっちに来るんだ?」
「えっと…今週中にはこちらに来ると言っていた。でもまだプラントも今色々と忙しいらしくて。ほら、例のザフト基地専用コロニーを建てるとかなんとか……」

 ああ、例の件でまだ揉めているのか。
 ザフト基地専用コロニー。
 要するに、ザフトの勢力だけを集めたコロニーだ。
 政治的には勢力は集めたほうが楽だろうが、勢力が一箇所に集まりすぎるとそこを落とされると勢力が一気に減るわけだ。

「ザフト基地なんて地球に沢山あるんだし、宇宙にまで専用コロニーなんて作らなくてもいい気がするんだけどなぁ……」

 ポロリと本音を吐くカガリ。
 確かに、アスランもそれは同意見だった。
 今更基地など増やしてどうするつもりなのだろう? 大きな戦争が起こっているわけでもないのに。
 上の考えることは良く分からない。
 ただ、ラクスやキラが反対しているのは確かだろう。

 ――そういえば、キラ達は元気だろうか?

 ふと、かつて共に戦った者達の顔が浮かんだ。
 キラに、ラクスに、シン。
 それに、イザークやディアッカも居る。
 一体彼らは今何をしているのだろう?

 アスランはただ純粋に、彼らに会えることが楽しみで仕方がなかった。
2008.04.26

PHASE1-芽生える焔 part1

 ――ガガガ……

 暗がりで機械音が響いている。
 コピー機がつまったかのような苦しそうな音だ。
 ふとそんな音に一人の研究員が気づく。
 
「な、何か様子が変だぞ!」

 研究員の顔が一瞬にして青ざめた。そして大声を張り上げる。
 研究員の前には巨大で異様な人工子宮があった。
 いくつものコードで繋がっており、生きているかのように動く。
 いや、実際に“生きている”
 他の資料を見ていた研究員も、その声を聞いて周りに集まった。
 そしてじっと見つめたり音を聞いたりして、顔を真っ青にさせた。

 ――ガガガガァ……

 嫌な音はいっこうに止まない。
 むしろ大きくなる一方である。

「ちっ、こんなところで断念など出来るか。せっかくここまで来たんだぞ!」

 ある研究員がぐっと歯を食いしばり、拳をつくった。
 そしてその拳をばっと横に広げると声を張り上げた。

「俺達の未来を奴等に思うままにさせて、それを赦せというのか!」

 すると他の研究員もざわざわと喚きだした。
 何かに怒りをぶつけるようにして次々に拳をつくる。

「何があっても生かすんだ!」 
「越えるんだ。あいつらを絶対に、越えるんだ!」

 研究員全員の目がギラリと光った。
 手は緊張で汗にまみれている。
 絶対に失敗は赦されない。
 これを失敗すれば研究員達の過ごした3年は水の泡に変わる。
 冷静になれ、どこかに必ず落とし穴がある。
 彼らは必死に自分達にそう言った。

「世界は、我々の者だ。あんな子供に…SEEDを持つ者などに……」

 食いしばっていた歯を左右に動かして歯軋りをした。

 悔しい、悔しすぎる。そして同じくらい赦せない。
 キラ・ヤマト……。
 彼を造ったのはここにいる研究員達なのに、なぜ彼は生みの親である者を裏切ったのか!
 あのヒビキ博士の女は、なぜそう易々とアレを手放してしまったのか!
 やはり彼が双子であり、ナチュラルの姉が居たのが影響してしまったのだろうか。
 裏切るのであれば、あの時クローン達と一緒に死んでいればよかったものを。
 
 彼に仲間など必要ない。SEEDを持つ者達はもちろん、特にザラの息子は。
 彼らは、スーパーコーディネイターのキラに匹敵する力を持っている。
 

 ――越えてみせる。我々がこの手で!
   あんな奴等に我々の未来を指図され、作られてたまるものか――