2008.06.01
プレゼント
アスランはじりじりと後ずさりしていた。
額にはびっしり冷や汗をかいていて、見上げる視線の先にはニッコリ微笑むキラの姿。
「いや、その、まだ、というか……」
「というか?」
ニッコリ微笑みつつも、すごんでくるキラ。
――やっぱり、怒ってるか…そりゃ怒るよな……
「悪い、実はオーブでも仕事が色々忙しくて、そっちまで気が回らなかったんだ。キラに会えるかどうかも分からなかったし……」
「へえ〜。で、ちゃっかりカガリには誕生日プレゼントあげたんだ♡」
キラがしゃべるごとに、汗の粒が多くなる。
アスランは、手のひらを見せてキラを制した。
「ちゃっかりていうか、まあその、言い訳みたいなことはしたくないんだが……カガリとは毎日顔合わせるから、忘れるにも忘れられないだろう? でもキラは……」
「毎日顔合わせないから忘れちゃう?」
「う、いや――」
ちょっと言い方をしくじったと、言った後に気付くアスラン。
なぜか、こういう類いの事についてはどこか抜けているのだ、彼は。
「ひどいよ、アスラン。僕はいつも君の事考えたのに……忘れちゃったの? 僕を?」
「違う、違うんだ、キラ。俺だっていつも考えたさ。何してるのかとか、何処にいるのかとか」
「本当? アスラン?」
「ああ、本当だよ」
キラは、さっきまでの鋭い笑みを引っ込めて、心から微笑んでくれた。
アスランは、ゆっくり息を吐いて、肩の力をぬく。
「じゃあさ、今から僕にプレゼントちょうだい」
「へ?」
アスランは、せっかく吐いた息を、また大量に知ってしまった。
――今から? ふざけるな。無理に決まってるだろ。今何時だと思ってるんだ。
「キラ、それはちょっと無理だろ。明日じゃダメか?」
「ダメ」
「でも、店はどこも閉店してるだろうし――」
「別にお店に行かなくても賞品ならここにあるじゃない」
「……?」
キラがまたニッコリと微笑みだす。
心からの笑みではない。
いやらしいどこか皮肉れた笑みだ。
「おい、ちょっとまて、キラ。俺、実は急用が――」
「ダーメ。ダメダメ。急用は後回しね。僕につきあって。忘れた罰だよ」
クルリと向きを変えて部屋から出ようとしたアスランをキラが強引に引っ張って床に押し倒す。
不意を疲れたアスランは、とっさに顔を青くするとキラに怒鳴りつけた。
「なっ、ちょ、なんか話ずれてるだろ、ていうか最初からこれが目的だったんだろ、キラッ!!」
そんなアスランを見て、さらににんまり笑うキラ。
その顔は、幼い頃マイクロユニットの課題を押し付けてきた時のようだった。
キラがその顔をすると、絶対に何か面倒なことが起こる。
「だって、今日僕の誕生日じゃん。僕の言う事なんでも聞いて!」
「ふざけるな! なんで俺が下なんだ」
「僕、下嫌だもん」
――そりゃ男だったらそういうもんだろ。
「いや、だから、……なら俺がお前を、その、してやるから、俺が下っていうのは――」
「いやだよ。 今日は僕の誕生日なんだから。アスランはプレゼント。じゃあさ、君の誕生日の時に僕が何でも言う事聞いてあげる」
――いや、俺そういう事を言いたいわけじゃなくて……。
「だから、ね?」
「なっ………」
――でもなんで、俺はキラのいう事を断ることが出来ないんだろうか。
「今日だけ、だからな……」
「ありがと、アスラン」
にっこりと嬉しそうに微笑むキラ。アスランもそれにつられてわずかに笑みをつくる。
しかしアスランはその時は気付いていなかった。
キラがこれから自分に何をしでかそうとしているのかということに……。
【後書き】
すみません、変な終り方で。なんかありきたりww
最後まで書こうかと思ったんですが、パスしておきました。
そこまで書くの上手くないので……。
これからアスランがどんな目に合うのかは、ご想像にお任せします。
額にはびっしり冷や汗をかいていて、見上げる視線の先にはニッコリ微笑むキラの姿。
「いや、その、まだ、というか……」
「というか?」
ニッコリ微笑みつつも、すごんでくるキラ。
――やっぱり、怒ってるか…そりゃ怒るよな……
「悪い、実はオーブでも仕事が色々忙しくて、そっちまで気が回らなかったんだ。キラに会えるかどうかも分からなかったし……」
「へえ〜。で、ちゃっかりカガリには誕生日プレゼントあげたんだ♡」
キラがしゃべるごとに、汗の粒が多くなる。
アスランは、手のひらを見せてキラを制した。
「ちゃっかりていうか、まあその、言い訳みたいなことはしたくないんだが……カガリとは毎日顔合わせるから、忘れるにも忘れられないだろう? でもキラは……」
「毎日顔合わせないから忘れちゃう?」
「う、いや――」
ちょっと言い方をしくじったと、言った後に気付くアスラン。
なぜか、こういう類いの事についてはどこか抜けているのだ、彼は。
「ひどいよ、アスラン。僕はいつも君の事考えたのに……忘れちゃったの? 僕を?」
「違う、違うんだ、キラ。俺だっていつも考えたさ。何してるのかとか、何処にいるのかとか」
「本当? アスラン?」
「ああ、本当だよ」
キラは、さっきまでの鋭い笑みを引っ込めて、心から微笑んでくれた。
アスランは、ゆっくり息を吐いて、肩の力をぬく。
「じゃあさ、今から僕にプレゼントちょうだい」
「へ?」
アスランは、せっかく吐いた息を、また大量に知ってしまった。
――今から? ふざけるな。無理に決まってるだろ。今何時だと思ってるんだ。
「キラ、それはちょっと無理だろ。明日じゃダメか?」
「ダメ」
「でも、店はどこも閉店してるだろうし――」
「別にお店に行かなくても賞品ならここにあるじゃない」
「……?」
キラがまたニッコリと微笑みだす。
心からの笑みではない。
いやらしいどこか皮肉れた笑みだ。
「おい、ちょっとまて、キラ。俺、実は急用が――」
「ダーメ。ダメダメ。急用は後回しね。僕につきあって。忘れた罰だよ」
クルリと向きを変えて部屋から出ようとしたアスランをキラが強引に引っ張って床に押し倒す。
不意を疲れたアスランは、とっさに顔を青くするとキラに怒鳴りつけた。
「なっ、ちょ、なんか話ずれてるだろ、ていうか最初からこれが目的だったんだろ、キラッ!!」
そんなアスランを見て、さらににんまり笑うキラ。
その顔は、幼い頃マイクロユニットの課題を押し付けてきた時のようだった。
キラがその顔をすると、絶対に何か面倒なことが起こる。
「だって、今日僕の誕生日じゃん。僕の言う事なんでも聞いて!」
「ふざけるな! なんで俺が下なんだ」
「僕、下嫌だもん」
――そりゃ男だったらそういうもんだろ。
「いや、だから、……なら俺がお前を、その、してやるから、俺が下っていうのは――」
「いやだよ。 今日は僕の誕生日なんだから。アスランはプレゼント。じゃあさ、君の誕生日の時に僕が何でも言う事聞いてあげる」
――いや、俺そういう事を言いたいわけじゃなくて……。
「だから、ね?」
「なっ………」
――でもなんで、俺はキラのいう事を断ることが出来ないんだろうか。
「今日だけ、だからな……」
「ありがと、アスラン」
にっこりと嬉しそうに微笑むキラ。アスランもそれにつられてわずかに笑みをつくる。
しかしアスランはその時は気付いていなかった。
キラがこれから自分に何をしでかそうとしているのかということに……。
【後書き】
すみません、変な終り方で。なんかありきたりww
最後まで書こうかと思ったんですが、パスしておきました。
そこまで書くの上手くないので……。
これからアスランがどんな目に合うのかは、ご想像にお任せします。
2008.05.30
PHASE2-奪われた翼 part5
カガリ達は、内閣府官邸に戻ったかと思うと、すぐさまAAと向かった。
停戦後、AAに一度入った事があるルナだが、どこからかあの戦争の苦しさが染み渡るのを感じた。
それと共に、絆や希望といったものが自然と心の中に入り、さっきの悲惨な光景が一瞬頭から抜けた。
「ラミアス艦長、オーブのデータが流出しているというのは本当か!」
カガリが、勢いよくラミアス艦長に迫る。
その声で、はっと我に返るルナマリア。
ラミアス艦長は、けわし気に眉間にシワを寄せると、コクリと頷いた。
「ええ。それも、どこへ流れているか分からないの。必死に探してるんだけど……」
「流出は止めたか?」
「ええ、もう大丈夫」
「どうしてこんなミスを…あんなことが、あった、ばかりなのに……」
カガリは、ぐっと拳を作ると、歯を食いしばった。
すると、そのすぐ脇からキラが現れる。
そしてラミアス艦長と目を合わせると、流出先を突き止める手伝いをしだす。
――確か、こういう事についてはヤマト隊長のほうがアスランよりも得意なんだっけ。
ルナは、軽々しくそんなことを考えた。
「ちっ、裏の回線から…それも、見落としがちな小さな回線だ。それに、居場所がばれないよう途中で……」
よくわからないが、キラがぶつぶつと何かを呟いていた。
そして、指が見えないような速さでキーを打つ。
その間、アスランとカガリ、ラミアス艦長は、爆発の件について話していた。
「テロ? そうとうひどいの?」
「はい。バスに乗ってた人は、誰も――」
そこで苦しげに首を振るアスラン。
誰も生きていなかった、ということだ。
カガリは、悲しげな目でアスランを見上げる。
「テロ……それにデータ流出か。ちっ、面倒くさいっ」
イザークは、舌打ちをしてえらそうに腕を組む。
しかし、その奥深くでは不安や悲しみが渦巻いているだろう。
あまり表に感情を出さないのが、また彼のいいところなのだ。
すると、急にキラが顔を上げた。
「マリューさん、流出先が分かりました。えっと――え? この位置は……」
何に驚いたのか、目を見開いたまま固まるキラ。
ラクスは、そんなキラに駆け寄ると、画面を覗き込む。
そしてキラと顔を合わせると、彼女に珍しく眉間にシワを寄せた。
「カーペンタリア、ですか?」
「うん。多分……」
すると、イザークが驚いて声を上げた。
組んでいた腕をはずし、キラの肩をぐっと掴む。
「おい、カーペンタリアだと? ならお前はザフトがオーブのデータを奪ったというのか?」
「イザーク、カーペンタリアだからってザフトが奪ったとは断言できないよ」
「なら、誰が大量のデータをもっていったというんだ?」
「う〜ん、それは……」
言葉に詰まってラクスの顔を見やる。
そして首を振った。
「とにかく、今はまだ何もいえないよ。……カーペンタリアならココからそう遠くない」
キラはカガリの顔を見つめた。
そして軽く首をかしげてみせる。
カガリは、キラの言いたい事を理解したのか、勢いよく頷いた。
「行こう。ラクスや隊長が二人もいるのだから、オーブの者でも通してくれるだろう」
それにあわせて、ルナマリアもぐっと頷いた。
そしてシンの顔を見る。
シンも、ルナに微笑みかけると頷いた。
皆同じ意見、という事だ。
するとラミアス艦長は穏やかな笑みを見せると言った。
「分かったわ。テロの事は私達のほうで探ってみます。ただのテロだと、いいんだけど……」
「この流出とテロが重なったのが偶然だったらいいんだけどねぇ」
少し不安そうに言うラミアス艦長の横からフラガ一佐が軽々しくそう言った。
しかし、言っている内容がそれいじょうに重い。
そう、そうなのだ。問題はそこだ。
――データを盗む為にテロを起こしたのではないか。
みんな、そのことを深く疑っていた。
停戦後、AAに一度入った事があるルナだが、どこからかあの戦争の苦しさが染み渡るのを感じた。
それと共に、絆や希望といったものが自然と心の中に入り、さっきの悲惨な光景が一瞬頭から抜けた。
「ラミアス艦長、オーブのデータが流出しているというのは本当か!」
カガリが、勢いよくラミアス艦長に迫る。
その声で、はっと我に返るルナマリア。
ラミアス艦長は、けわし気に眉間にシワを寄せると、コクリと頷いた。
「ええ。それも、どこへ流れているか分からないの。必死に探してるんだけど……」
「流出は止めたか?」
「ええ、もう大丈夫」
「どうしてこんなミスを…あんなことが、あった、ばかりなのに……」
カガリは、ぐっと拳を作ると、歯を食いしばった。
すると、そのすぐ脇からキラが現れる。
そしてラミアス艦長と目を合わせると、流出先を突き止める手伝いをしだす。
――確か、こういう事についてはヤマト隊長のほうがアスランよりも得意なんだっけ。
ルナは、軽々しくそんなことを考えた。
「ちっ、裏の回線から…それも、見落としがちな小さな回線だ。それに、居場所がばれないよう途中で……」
よくわからないが、キラがぶつぶつと何かを呟いていた。
そして、指が見えないような速さでキーを打つ。
その間、アスランとカガリ、ラミアス艦長は、爆発の件について話していた。
「テロ? そうとうひどいの?」
「はい。バスに乗ってた人は、誰も――」
そこで苦しげに首を振るアスラン。
誰も生きていなかった、ということだ。
カガリは、悲しげな目でアスランを見上げる。
「テロ……それにデータ流出か。ちっ、面倒くさいっ」
イザークは、舌打ちをしてえらそうに腕を組む。
しかし、その奥深くでは不安や悲しみが渦巻いているだろう。
あまり表に感情を出さないのが、また彼のいいところなのだ。
すると、急にキラが顔を上げた。
「マリューさん、流出先が分かりました。えっと――え? この位置は……」
何に驚いたのか、目を見開いたまま固まるキラ。
ラクスは、そんなキラに駆け寄ると、画面を覗き込む。
そしてキラと顔を合わせると、彼女に珍しく眉間にシワを寄せた。
「カーペンタリア、ですか?」
「うん。多分……」
すると、イザークが驚いて声を上げた。
組んでいた腕をはずし、キラの肩をぐっと掴む。
「おい、カーペンタリアだと? ならお前はザフトがオーブのデータを奪ったというのか?」
「イザーク、カーペンタリアだからってザフトが奪ったとは断言できないよ」
「なら、誰が大量のデータをもっていったというんだ?」
「う〜ん、それは……」
言葉に詰まってラクスの顔を見やる。
そして首を振った。
「とにかく、今はまだ何もいえないよ。……カーペンタリアならココからそう遠くない」
キラはカガリの顔を見つめた。
そして軽く首をかしげてみせる。
カガリは、キラの言いたい事を理解したのか、勢いよく頷いた。
「行こう。ラクスや隊長が二人もいるのだから、オーブの者でも通してくれるだろう」
それにあわせて、ルナマリアもぐっと頷いた。
そしてシンの顔を見る。
シンも、ルナに微笑みかけると頷いた。
皆同じ意見、という事だ。
するとラミアス艦長は穏やかな笑みを見せると言った。
「分かったわ。テロの事は私達のほうで探ってみます。ただのテロだと、いいんだけど……」
「この流出とテロが重なったのが偶然だったらいいんだけどねぇ」
少し不安そうに言うラミアス艦長の横からフラガ一佐が軽々しくそう言った。
しかし、言っている内容がそれいじょうに重い。
そう、そうなのだ。問題はそこだ。
――データを盗む為にテロを起こしたのではないか。
みんな、そのことを深く疑っていた。
2008.05.26
PHASE2-奪われた翼 part4
一方、ここはアークエンジェル。
マリューは、ちょうど政府から帰ってきていた。
朝からずっと会議だったらしく、眠くてたまらない。
すこしコックピットによってから、自室で睡眠を取らなければ。
優雅にそんなことを考えながら、マリューはコックピットへ入った。
すると、いきなりノイマンの叫び声が聞こえる。
「どうしたの、何かあったの?」
とっさに顔を青くするノイマンに駆け寄りたずねる。
ノイマンは、マリューが帰ってきたことに気付くと、画面を見せながら手短く言った。
「ジャスティスやアークエンジェル、いや、それだけじゃない……オーブ軍のデータが多数流出しているんです」
「なんですって?」
マリューもそれを聞いて、ノイマンと同じく顔を青くした。
――軍のデータが流出だなんて、そんなことが……
「一体どこに流出してるのか突き止められる?」
「ええ、やってるんですが……」
突き止められない、か。
ということは、相手は相当“腕前がある”らしい。
「おいマリュー、なんか外がやばいことになって、って、どうした?」
何かをマリューに愚痴りに来たのか、ムウがコックピットに入ってきた。
マリューは無言でムウを手招くと、画面を見せる。
「――これは……データが流出? 一体何処の馬鹿だ?」
マリューは首を振った。
「分からないわ。でも、早く政府に…カガリさんに伝えないと。今カガリさんは何処にいるか分かる?」
「そう、俺今それを言いに来たんだ。お姫様は坊主達と一緒にオロファトへ行ったんだが、そこでバスが大爆発したみたいで大騒ぎなんだ。なんでもテロだって……」
「テロですって? それでカガリさんたちは無事なの?」
「ああ、なんとかな」
マリューは額に手を当てると深くため息をついた。
どうやら、自室で優雅にお昼寝は無理なようだった。
――――
「カガリ…ラクス? 来たのか――」
「おい貴様、これは、これは一体どういう騒ぎだ! なぜ、車がそこら中に転がっているんだ!」
イザークは、アスランに掴みかかると共に怒鳴った。
イザークが動揺しているのが十分に分かった。
アスランは、そんな態度のイザークを見ても、口を開けずにいる。
「ああ、だから……“こういうこと”だ」
「なんだと貴様あぁ!」
「アスラン――」
ありありと怒りをあらわにしながら叫ぶイザークと対処に、カガリは呆然とコチラを見つめた。
そんな表情のカガリを見てずきりと胸が痛む。
――似ている、あの時と
父親が亡くなった時のように、苦しみを押し殺している。
アスランは、無理にカガリに笑いかけた。
すると、ラクスがキラに向かって言った。
「キラ、私達は一旦戻ったほうがいいでしょう。政府のほうに戻れば何か分かるかもしれません」
「うん、そうだね」
キラはゆっくり頷くと、カガリの肩を軽く叩いた。
「戻ろう。シンも、ルナも、イザーク達もそれでいいよね?」
「はは、どうせ嫌だとは言わせてもらえないんだろ?」
ディアッカは苦笑気味にそういいつつも、コクリと頷く。
他の皆も、あのイザークでさえ、もちろんといった表情で頷いた。
マリューは、ちょうど政府から帰ってきていた。
朝からずっと会議だったらしく、眠くてたまらない。
すこしコックピットによってから、自室で睡眠を取らなければ。
優雅にそんなことを考えながら、マリューはコックピットへ入った。
すると、いきなりノイマンの叫び声が聞こえる。
「どうしたの、何かあったの?」
とっさに顔を青くするノイマンに駆け寄りたずねる。
ノイマンは、マリューが帰ってきたことに気付くと、画面を見せながら手短く言った。
「ジャスティスやアークエンジェル、いや、それだけじゃない……オーブ軍のデータが多数流出しているんです」
「なんですって?」
マリューもそれを聞いて、ノイマンと同じく顔を青くした。
――軍のデータが流出だなんて、そんなことが……
「一体どこに流出してるのか突き止められる?」
「ええ、やってるんですが……」
突き止められない、か。
ということは、相手は相当“腕前がある”らしい。
「おいマリュー、なんか外がやばいことになって、って、どうした?」
何かをマリューに愚痴りに来たのか、ムウがコックピットに入ってきた。
マリューは無言でムウを手招くと、画面を見せる。
「――これは……データが流出? 一体何処の馬鹿だ?」
マリューは首を振った。
「分からないわ。でも、早く政府に…カガリさんに伝えないと。今カガリさんは何処にいるか分かる?」
「そう、俺今それを言いに来たんだ。お姫様は坊主達と一緒にオロファトへ行ったんだが、そこでバスが大爆発したみたいで大騒ぎなんだ。なんでもテロだって……」
「テロですって? それでカガリさんたちは無事なの?」
「ああ、なんとかな」
マリューは額に手を当てると深くため息をついた。
どうやら、自室で優雅にお昼寝は無理なようだった。
――――
「カガリ…ラクス? 来たのか――」
「おい貴様、これは、これは一体どういう騒ぎだ! なぜ、車がそこら中に転がっているんだ!」
イザークは、アスランに掴みかかると共に怒鳴った。
イザークが動揺しているのが十分に分かった。
アスランは、そんな態度のイザークを見ても、口を開けずにいる。
「ああ、だから……“こういうこと”だ」
「なんだと貴様あぁ!」
「アスラン――」
ありありと怒りをあらわにしながら叫ぶイザークと対処に、カガリは呆然とコチラを見つめた。
そんな表情のカガリを見てずきりと胸が痛む。
――似ている、あの時と
父親が亡くなった時のように、苦しみを押し殺している。
アスランは、無理にカガリに笑いかけた。
すると、ラクスがキラに向かって言った。
「キラ、私達は一旦戻ったほうがいいでしょう。政府のほうに戻れば何か分かるかもしれません」
「うん、そうだね」
キラはゆっくり頷くと、カガリの肩を軽く叩いた。
「戻ろう。シンも、ルナも、イザーク達もそれでいいよね?」
「はは、どうせ嫌だとは言わせてもらえないんだろ?」
ディアッカは苦笑気味にそういいつつも、コクリと頷く。
他の皆も、あのイザークでさえ、もちろんといった表情で頷いた。
2008.05.18
PHASE2-奪われた翼 part3
シンは、目の前の光景に目を見開いた。
車は転倒し、あたりから人のうめき声が聞こえる。
――あの時と、同じ
シンは自分の体がすくみ上がるのが分かった。
いたるところから吐き出される煙、血、うめき声。
2年前に、アスランに言われた言葉がある。
“過去に囚われるな”と。
でも、それでもやはり、過去の記憶は消えやしない。
母さんや、父さんや、マユが死んでしまった記憶は。
「くそっ、一体、何が――」
シンは頭を左右に振ると、キラやアスランの姿を探した。
二人の姿を探している時、目の端に苦しむ人々の姿がちらつく。
「何処だよ、あの人たち……」
ふと中央で転倒するバスの端に、茶色い髪の毛がちらついた。
その直ぐそばで、青い髪の毛も目に入る。
「あそこだ」
シンは、急いでバスに駆け寄った。
バスに近づくにつれて、煙の量が多くなる。
「キラ、アスラン!」
服で口を押えながら、シンは大声で呼んだ。
その声に反応して、アスランがこちらに振り返る。
「シン! 来たのか」
「当たり前だろ! それより、……これは一体なんなんですか?」
「それは、分からない…。急にバスが爆発したらしいんだ。ガス爆発か、もしくは……」
――バスがガス爆発だ?
んなダジャレみたいなことが現実にあってたまるか。
「もしくは、なんですか」
もしくは――の続きをちゅうちょして言わないアスランに、シンは苛立ちを覚えた。
――本当にこの人は俺を苛立たせるのが得意なようだ。
すると、シンの心情を察してか、アスランに変わってキラが答えた。
「もしくは……計画的に行われた、爆破テロ」
「テロ? この、中立のオーブでですか?」
いや、この中立のオーブだから、なのかもしれないが。
まさかオーブでテロだなんて。
オーブでテロが起こるなんて、戦争時ならまだしも、なぜこう平和な時に?
「詳しくは分からない。とにかく、今は怪我人を助けるのが最優先だ」
「救急車は?」
「ついさっき呼んだよ」
――この際、計画的なテロよりも、バスがガス爆発のほうがいい。
過去の記憶が消えない為か、シンは誰かが人工的に流させる血というのを極端に嫌っているのだった。
そういうものに対しては、恐怖さえ覚える。
もしこれが本当にテロだったら、真面目にラクス・クラインの護衛をすることになるかもしれない。
シンの心の中は、不安で一杯になるばかりだった。
――――
「アスラン……」
カガリはそう静かに洩らした。
それに気付いた、ラクスは、カガリの肩をとんと叩く。
「ここで待つなんて、私達に出来るわけありませんのに。心配なのでしょう? 外で何があったのか。カガリさん、行きましょう」
「ラクス……」
ラクスは、そうやってカガリに言いつつ、自分も心配しているだけというのに気付いていた。
心配で心配でしょうがない。
そしてなのより不安だった。
さっきの爆発音、震動からして、そうここから遠くはない。寧ろすぐ傍だろう。
そんな危険なところに、あの三人だけで行ってしまうなんて――
キラ達にとったら、きっとラクス達を危ない目にあわせないためなのだろうけど、彼女達にとったら、それが逆に不安になるのだ。
――危険だからこそ、傍にいてほしい
「あいつらぁ〜俺を差し置いて! 何が“アスラン!”“ああ、分かってる!”だぁ?」
「おいおい、落ち着けってイザーク」
「おいラクス・クライン! 一応俺達はお前の護衛役なんだ。一人になられたら困る! 俺はあいつらのところへ行く! 一緒に来い!」
「ってイザーク、なんでお前、そんなん無理に決まって――」
「構いませんわ。皆さんで行きましょう」
「ええ! ちょっと……はぁ……ったく」
ラクスは、イザーク、ディアッカ、ルナマリア、そしてカガリの顔を見つめるとコクリと頷いた。
「嫌な予感がします」
車は転倒し、あたりから人のうめき声が聞こえる。
――あの時と、同じ
シンは自分の体がすくみ上がるのが分かった。
いたるところから吐き出される煙、血、うめき声。
2年前に、アスランに言われた言葉がある。
“過去に囚われるな”と。
でも、それでもやはり、過去の記憶は消えやしない。
母さんや、父さんや、マユが死んでしまった記憶は。
「くそっ、一体、何が――」
シンは頭を左右に振ると、キラやアスランの姿を探した。
二人の姿を探している時、目の端に苦しむ人々の姿がちらつく。
「何処だよ、あの人たち……」
ふと中央で転倒するバスの端に、茶色い髪の毛がちらついた。
その直ぐそばで、青い髪の毛も目に入る。
「あそこだ」
シンは、急いでバスに駆け寄った。
バスに近づくにつれて、煙の量が多くなる。
「キラ、アスラン!」
服で口を押えながら、シンは大声で呼んだ。
その声に反応して、アスランがこちらに振り返る。
「シン! 来たのか」
「当たり前だろ! それより、……これは一体なんなんですか?」
「それは、分からない…。急にバスが爆発したらしいんだ。ガス爆発か、もしくは……」
――バスがガス爆発だ?
んなダジャレみたいなことが現実にあってたまるか。
「もしくは、なんですか」
もしくは――の続きをちゅうちょして言わないアスランに、シンは苛立ちを覚えた。
――本当にこの人は俺を苛立たせるのが得意なようだ。
すると、シンの心情を察してか、アスランに変わってキラが答えた。
「もしくは……計画的に行われた、爆破テロ」
「テロ? この、中立のオーブでですか?」
いや、この中立のオーブだから、なのかもしれないが。
まさかオーブでテロだなんて。
オーブでテロが起こるなんて、戦争時ならまだしも、なぜこう平和な時に?
「詳しくは分からない。とにかく、今は怪我人を助けるのが最優先だ」
「救急車は?」
「ついさっき呼んだよ」
――この際、計画的なテロよりも、バスがガス爆発のほうがいい。
過去の記憶が消えない為か、シンは誰かが人工的に流させる血というのを極端に嫌っているのだった。
そういうものに対しては、恐怖さえ覚える。
もしこれが本当にテロだったら、真面目にラクス・クラインの護衛をすることになるかもしれない。
シンの心の中は、不安で一杯になるばかりだった。
――――
「アスラン……」
カガリはそう静かに洩らした。
それに気付いた、ラクスは、カガリの肩をとんと叩く。
「ここで待つなんて、私達に出来るわけありませんのに。心配なのでしょう? 外で何があったのか。カガリさん、行きましょう」
「ラクス……」
ラクスは、そうやってカガリに言いつつ、自分も心配しているだけというのに気付いていた。
心配で心配でしょうがない。
そしてなのより不安だった。
さっきの爆発音、震動からして、そうここから遠くはない。寧ろすぐ傍だろう。
そんな危険なところに、あの三人だけで行ってしまうなんて――
キラ達にとったら、きっとラクス達を危ない目にあわせないためなのだろうけど、彼女達にとったら、それが逆に不安になるのだ。
――危険だからこそ、傍にいてほしい
「あいつらぁ〜俺を差し置いて! 何が“アスラン!”“ああ、分かってる!”だぁ?」
「おいおい、落ち着けってイザーク」
「おいラクス・クライン! 一応俺達はお前の護衛役なんだ。一人になられたら困る! 俺はあいつらのところへ行く! 一緒に来い!」
「ってイザーク、なんでお前、そんなん無理に決まって――」
「構いませんわ。皆さんで行きましょう」
「ええ! ちょっと……はぁ……ったく」
ラクスは、イザーク、ディアッカ、ルナマリア、そしてカガリの顔を見つめるとコクリと頷いた。
「嫌な予感がします」
2008.05.16
PHASE2-奪われた翼 part2
シンは、呆然とアスランとキラを見送った。
それと共に、外から悲鳴が飛んでくる。
シンは、二人の背中が遠ざかる程、ふつふつと煮えたぎるような思いが湧き出てきた。
――ラクス達は待っててだ? もしかしてそのラクス達に俺の事も入ってるのかよ!
「ルナ待ってて。あの人達だけだと心配だから」
「え、ちょっと、シン!」
ルナは、駆け出そう行こうとするシンの袖を掴んだ。
それでもシンは微かに笑うと、イザークに言った。
「ジュール隊長もお願いします」
「なっ何を、シン、貴様! おいちょっと待て!」
必死にイザークが呼んでも、シンには届かない。
今のシンには、あの爆発音が家族が死んだときの爆発と重なっていた。
――呼んでる
シンにはそう思えてならなかった。
――――
「これが…。やっぱりすごいですね、クライン派の勢力って!!」
「一体どこからこんなものをつくる金を集めたのだか知りたいものだ……」
ヘルマン・グールドは深くため息をついた。
それとは対照的に感嘆を洩らす、セリム・グラディスは、本当にまだ幼いと思う。
確かにこれらは素晴らしい技術だ。
独自で開発したのにもかかわらず、ディスティニーやレジェンドなどにも匹敵したという。
しかし、そこまで興奮されてはこちらも困る。
「VPS装甲に、HDエンジン搭載……。その上、操縦者に合わせて開発しているし、ミーティアとの連携運用が可能。勿論この二機が強いのはそれだけじゃなく、やっぱり操縦者が凄いんですよ」
「ええ、まあ」
「でしょう? 僕は、特にアスラン・ザラに一度お会いしたいと思っているんです」
セリムは、目を輝かせながらそう語った。
セリム・グラディス、15歳。母、タリア・グラディスが軍人であったこともあり、伝説のエースパイロットといわれた、アスラン・ザラに憧れて入隊を志願。
今では士官学校を首席で卒業し、立派な軍人としてプラントにいる。
グルードは、そんなセリムを見て呆れたような顔をした。
「なぜアスラン・ザラなんだ? 私はアスラン・ザラよりもキラ隊長のほうが強いと思うんだが」
するとセリムは、これだから大人は…とでも言うような目つきでこう言った。
「そりゃそうでしょう。実力はキラ隊長のほうが確実に上です。しかし、アスラン・ザラはとても精神的に強い方だと思うんですよ」
「なぜだ?」
「なぜってそれは…、二度も議長に裏切られて、殺されそうになっても、婚約者に振られても、挫けず今もオーブで国の為に軍に所属しているんですから」
グールドは、必死に噴出すのを堪えていた。
こんな風に言われているのをアスラン・ザラが知れば、相当傷付くだろうに。
しかしセリムには全く悪気が無いらしく、熱くアスラン・ザラ“様”について語っている。
――これだから子供は……
「あ、ところでグールド議員。なぜ僕などにフリーダムやジャスティスのデータを見せてくれたのですか? これらの情報はクライン派が厳重に管理しているはずでは――」
「あ、いや、いいんだこれは。私達は君に期待しているんだよ。なんといってもタリア・グラディスの息子だからね。君には強くなって欲しい。また戦争なんて起きるとは思えないがね」
「は、はい! ありがとうございます!」
セリムは、グールド議員に褒められて、顔が嬉しさのあまり真赤になった。
骨格が引きつるように上がる。
そして頭を深く下げると、スキップをしながらその場から立ち去った。
「期待……か。何も知らないことよりも、平和なことはないな……」
グールドは、ちらりと二つのデータを見やった。
ZGMF-X20A ストライクフリーダムガンダムと、ZGMF-X19A インフィニットジャスティスガンダム。
そしてにやりと笑うと、本当の目的の為にデータを写すとその場から離れた。
それと共に、外から悲鳴が飛んでくる。
シンは、二人の背中が遠ざかる程、ふつふつと煮えたぎるような思いが湧き出てきた。
――ラクス達は待っててだ? もしかしてそのラクス達に俺の事も入ってるのかよ!
「ルナ待ってて。あの人達だけだと心配だから」
「え、ちょっと、シン!」
ルナは、駆け出そう行こうとするシンの袖を掴んだ。
それでもシンは微かに笑うと、イザークに言った。
「ジュール隊長もお願いします」
「なっ何を、シン、貴様! おいちょっと待て!」
必死にイザークが呼んでも、シンには届かない。
今のシンには、あの爆発音が家族が死んだときの爆発と重なっていた。
――呼んでる
シンにはそう思えてならなかった。
――――
「これが…。やっぱりすごいですね、クライン派の勢力って!!」
「一体どこからこんなものをつくる金を集めたのだか知りたいものだ……」
ヘルマン・グールドは深くため息をついた。
それとは対照的に感嘆を洩らす、セリム・グラディスは、本当にまだ幼いと思う。
確かにこれらは素晴らしい技術だ。
独自で開発したのにもかかわらず、ディスティニーやレジェンドなどにも匹敵したという。
しかし、そこまで興奮されてはこちらも困る。
「VPS装甲に、HDエンジン搭載……。その上、操縦者に合わせて開発しているし、ミーティアとの連携運用が可能。勿論この二機が強いのはそれだけじゃなく、やっぱり操縦者が凄いんですよ」
「ええ、まあ」
「でしょう? 僕は、特にアスラン・ザラに一度お会いしたいと思っているんです」
セリムは、目を輝かせながらそう語った。
セリム・グラディス、15歳。母、タリア・グラディスが軍人であったこともあり、伝説のエースパイロットといわれた、アスラン・ザラに憧れて入隊を志願。
今では士官学校を首席で卒業し、立派な軍人としてプラントにいる。
グルードは、そんなセリムを見て呆れたような顔をした。
「なぜアスラン・ザラなんだ? 私はアスラン・ザラよりもキラ隊長のほうが強いと思うんだが」
するとセリムは、これだから大人は…とでも言うような目つきでこう言った。
「そりゃそうでしょう。実力はキラ隊長のほうが確実に上です。しかし、アスラン・ザラはとても精神的に強い方だと思うんですよ」
「なぜだ?」
「なぜってそれは…、二度も議長に裏切られて、殺されそうになっても、婚約者に振られても、挫けず今もオーブで国の為に軍に所属しているんですから」
グールドは、必死に噴出すのを堪えていた。
こんな風に言われているのをアスラン・ザラが知れば、相当傷付くだろうに。
しかしセリムには全く悪気が無いらしく、熱くアスラン・ザラ“様”について語っている。
――これだから子供は……
「あ、ところでグールド議員。なぜ僕などにフリーダムやジャスティスのデータを見せてくれたのですか? これらの情報はクライン派が厳重に管理しているはずでは――」
「あ、いや、いいんだこれは。私達は君に期待しているんだよ。なんといってもタリア・グラディスの息子だからね。君には強くなって欲しい。また戦争なんて起きるとは思えないがね」
「は、はい! ありがとうございます!」
セリムは、グールド議員に褒められて、顔が嬉しさのあまり真赤になった。
骨格が引きつるように上がる。
そして頭を深く下げると、スキップをしながらその場から立ち去った。
「期待……か。何も知らないことよりも、平和なことはないな……」
グールドは、ちらりと二つのデータを見やった。
ZGMF-X20A ストライクフリーダムガンダムと、ZGMF-X19A インフィニットジャスティスガンダム。
そしてにやりと笑うと、本当の目的の為にデータを写すとその場から離れた。


